本研究の目的は,実習期間中に学生が記録した実習ノートを分析対象とし,テキスト・マイニング手法を用いて彼らの学びの構造を明らかにすることである。先行研究により,実習の実施方法や状況については,施設や機関によって差異のあることが報告されているため,本報告では配属機関を「病院」に絞り解析結果を報告する。解析方法については,書き手である実習生が何に対して評価・判断を行っているのかを把握するため,係り受け解析にてカテゴリーを抽出した。さらに係り受けの関係において受ける語と係る語を認識するため,第二次分析ではコンセプトパターンの表示方法を用いて文章で表明された行為・動作とその対象の関係を抽出した。本研究はテキスト型データを用いて実習生の学びについて探索的に研究することが目的であるため,カテゴリーの項目を選出する際には手動ではなく自動化生成を選択し,データに対する最適解を自動的に探し出す言語学的手法に基づく抽出を採用した。 その結果,言及頻度の高い順に「利用者(患者)」「面接」「MSW」「必要」「家族」「情報」「生活」「退院」「説明」「記録」「生活保護」「状況」というカテゴリーが抽出された。語彙群の文脈(元データの表示は割愛)からは,利用者とMSWの面接に実習生が同席して,退院援助を目的とした家族への情報提供や相談,生活保護を受給する利用者の生活に関する相談,医療サービスに関する苦情対応場面等を観察しながら,自らをこれまでの一般的な生活者ではなく援助者として位置づけ,自分をコントロールして利用者と向き合うためには何が必要であるかを模索する姿が浮かび上がっている。サービス利用について判断するためのアセスメント状況や,利用者との関係形成に影響を与えそうな自分自身の行動を認識しようとする状況把握,ならびに,援助者が保持すべき知識について自覚的になろうとする学びが特徴的である。
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