研究概要 |
本研究の目的は,開発途上諸国における貧困家族の子どもの学校教育を通じた階層上昇の可能性の検証である。この目的を達成するために三つの研究課題をおいた。主たる課題は,貧困家族の子どもの階層上昇にとって,学歴がどのような役割を果たしているのかを明らかにすることである。次いで,子どもの階層上昇と学歴形成のプロセスの前提条件といえる,1.学校教育と労働市場の接続関係,2.学歴形成に関わる教育政策,の現状を明らかにすることを二つのサブ研究課題とする。これらの課題に取り組むために、22年度に引き続き、大学生の就職活動調査,労働市場の動向調査,教育政策の動向調査を23年度もすすめた。 佐々木が担当した大学生の就職活動調査では昨年からの事例の追跡は実施したが,予定していたように事例数を増やすことはできなかった。それに代えて,現在のインドで多くの文系学生の就職活動の拠点になっている高等教育機関の一つであるMBAスクールに焦点をあてた情報収集をすすめ、インドの労働市場と高等教育の接続におけるMBAスクールの役割を一定程度明らかにした。 山崎が担当した労働市場の動向調査では,インドの労働市場を展望するうえで無視することのできない日本の部品メーカーのグローバル展開戦略を調査し,そのような企業がインドの学卒者向けの雇用供給の担い手となりうる可能性を確認した。 牛尾が担当した教育政策の動向調査では,インドで2010年に施行された「無償義務教育に関する子どもの権利法(RTE2009)」の成立プロセスと施行の実情について調査をすすめた。その結果,RTE2009は,貧困家族の子どもの脱貧困を力強くサポートする可能性を秘めた画期的な法であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
22年度と23年度に実施した調査により,研究目的を達するための調査データはかなりの程度揃っているが,大学生の就職活動調査に関しては,現地協力者の立場の変化(23年8月に家庭の事情により大学院を中退し就職した)のため事例調査を予定どおりすすめることが不可能となった。そこで急きょ調査のすすめ方を変更し,結果として進捗状況に若干の遅れが発生した。
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