本年度は、三名の研究スタッフが、それぞれ22年度からすすめきた三種の調査の結果をとりまとめつつ、公開できるものは学協会の口頭発表の場や学術誌等において公開した。また、研究全体の成果は「学校教育は脱貧困に寄与しているか? ~インドで急増する『就職のための私立教育機関』からの報告」と題した国際ワークショップを開催し報告した。なお、本ワークショップは平成24年11月28日に広島大学において、広島大学現代インド研究センターの研究集会として企画開催したものである。 上記ワークショップでは、まず研究代表者(佐々木宏)が本研究の最たる成果の一つある『就職のための私立教育機関』の野放図な増加の発見について調査結果を使い説明をした。その上で、Triumphant Institute of Management Education(T.I.M.E.)、ウッタル・プラデーシュ(U.P.)州Varanasiセンター経営者・Anupam Raghuvanshi氏からインドにおける中高等教育修了者向けの私立の教育機関の動向について報告があった。 Varanasiにおける『就職のための私立教育機関』の一つであるT.I.M.E センター経営者のRaghuvanshi氏によれば、『就職のための私立教育機関』の増加の背景には、慢性的な高学歴者の就職難のなかでも教育要求の高まりが衰えていないこと、既存の中高等教育機関が学生の就職支援に失敗していること、等があるという。また、Raghuvanshi氏は、私立教育機関のなかには公教育制度の枠の外にある「無認可校」や情報公開が進んでいない学校等、質において問題のある学校も少なからずあるという問題点も指摘した。Raghuvanshi氏の報告後、脱貧困支援のための学校教育実現のための政策と研究の今後の課題について討論を行った。
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