研究課題/領域番号 |
22530604
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
梅崎 薫 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (50320891)
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キーワード | 高齢者虐待 / 家族支援 / 社会環境要因 / 通報率 / 国際比較 |
研究概要 |
前年に引き続き実施した高齢者虐待通報率を手掛かりに、専門職および地域住民と、「適切な早期発見と通報とは」について議論できるような、わが国の高齢者虐待の実態と対応状況を描くべく、既存統計からの分析を実施した。その結果、都道府県各HPに公表されている虐待対応統計から、養護者による高齢者虐待通報と社会環境要因に関する一考察を、またわが国の統計と比較可能な海外の先行研究との比較から、Analyzing Reported Rates of Domestic Elder Abuse in Japan 2006-2009を学会発表した。また、わが国の高齢者虐待対応の課題、専門職の判断基準に関する仮説を設定した原著論文がH24年度掲載予定である。 昨年度、虐待通報率と施設入所待機率との関連を統計分析から得たが、経済的困窮や家族要因との関連は認められなかったので、全ての都道府県に対して、過去の養護者による高齢者虐待対応結果などの提供協力を求める調査を実施した。この調査結果により、今年度はHPに公表していた37都府県だけでなく全都道府県データをもとに、再度、経済的要因や家族の影響を分析し、専門職および地域住民と「適切な早期発見と通報とは」について議論できる素材の完成を目指す。 また昨年、課題設定した専門職の判断基準に関する仮説を検証するために、わが国に先行する海外の専門職に対するインタビュー調査と、第一線専門職との共同研究に着手し、わが国の文化に見合い、高齢者虐待でのローリスク集団をハイリスク集団に至らせない、未然防止に有効な、虐待への危機介入方法、具体的な家族支援、介入方法のモデル構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
22-23年度には研究計画の変更が必要になり、予定したケアマネジャーへのフォーカスグループインタビューからも想定したように情報を引き出せず、変更計画通りに実施できなかった。しかし、その理由を考察し、公表統計などの分析や国際比較、虐待判断と文化の影響などの考察から、高齢者虐待の判断における専門職の虐待判断に対する抵抗感と混乱、経験的な虐待判断の形成過程と社会環境との関連という仮説を設定することができた。これにより、当初計画より早い24年度、わが国の文化に見合う、高齢者虐待でのローリスク集団をハイリスク集団に至らせない予防的介入方法を、地域包括支援センター社会福祉士らの第一線専門職と、具体的に、タイプ別、介入モデル構築を目指せる段階に到達した。今後は、当初計画通りにアクションリサーチ段階に向けた研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者虐待の判断に関して、わが国に先行する欧米諸国やアジア諸国のソーシャルワーカーに対して、国際学会や国際交流などの機会をとらえて、緊急性の高い事例でなく緊急性の低い虐待事例に対する虐待判断、予防概念と再発防止概念の区別などに関し、ヒアリング調査を加えて、ローリスク集団への予防的介入モデル構築の参考とする。 同時に、地域住民に対し、わが国の高齢者虐待への対応状況を、ともに検討していけるための提示情報、公表統計の都道府県別結果とその社会環境要因との分析をすすめていく。この公表統計の分析は、専門職と地域住民が、ともに検討し協働できるためのツールとして使用する。
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