研究課題/領域番号 |
22530604
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
梅崎 薫 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (50320891)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 地域住民との連携 / 予防的ソーシャルワーク / 環境要因 / 包括的家族支援 / 修復的正義 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
高齢者虐待対応は、様々な専門職による支援と地域住民による見守り支援が必須である。しかし家族等から虐待を受けている高齢者は専門職への相談・通報を拒む場合が多々あり、本人の意思であるために必要な支援や対応ができない状況を生む。これまでの研究結果から、相談・通報を口止めしていた被虐待高齢者でも家族関係悪化の極めて早期に市町村や専門職に相談している可能性が推察された。また比較的早期に発見された緊急性の低い虐待疑い事例は、地域で見守ることが多いので状況改善につながりにくく、家族関係はさらに悪化して緊急性の高い虐待状況に陥ることも少なくない。 そこで虐待者となっている家族員のニーズにも焦点づけ、地域社会から誰も排除しない哲学を持つ、司法領域でのRestorative Justice修復的正義と呼ばれる方法をソーシャルワークに導入し、専門職と地域住民が連携して早期から家族関係の修復を支援する予防的家族支援プログラムを開発するために検討すべき課題や要点を明らかにする。 高齢者虐待を予防するには、ミクロシステムへの働きかけだけでなくメゾおよびマクロシステムにも目を向けて、介入方法を検討する必要がある。地域社会から排除するのでなく、対話により関係を修復して包含しようとするRestorative Justice修復的正義の哲学や手法は、高齢者に依存せざるを得ず同居して暮らす成人子を、高齢者と共に地域社会に包含しようとするので、地域福祉の理念とも合致し、予防的家族支援プログラムの基盤となる価値を強化する哲学として期待できる。 わが国の地域特性や文化に見合った導入方法を検討するために、日本で高齢者虐待に対応している地域包括支援センターの社会福祉士らに修復的対話Restorative Justiceを講義し、従来の家族介入との比較、導入する際に想定される課題などをインタビュー調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、具体的な介入方法を実施する段階に入ることができた。国際的な研究者交流により、より現実的で効果的と思われる介入方法の試行段階に入ることもできた。国際交流は、最初の研究計画では想定していなかったため、研究費用の点で、不足しているが、外部助成などの獲得に努めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、相談・通報を口止めしている被虐待高齢者が家族関係悪化の極めて早期に市町村や専門職にも相談していたこと、緊急性の低い事例は困難事例として把握されていること、サービス拒否や虐待する家族の精神疾患やアルコール依存など考慮すると、包括的な家族支援が必要とわかった。そこで司法領域でのRestorative Justice修復的正義、ファミリーグループカンファレンス、環境要因に焦点をあてるアセスメントツールの併用で、地域住民と連携する修復的実践、高齢者虐待予防の家族支援プログラムの試行準備に入る。 I期2013年4月-9月:4-9月関東圏と北陸。1回目レストレイティブ・ジャスティス(RJ:修復的司法)に関する勉強会の開催。2回目はPerson-in Environment(PIE)という環境要因アセスメントシートの日本バージョン(梅崎改良)を活用する勉強会を開催。またそれぞれの実践経験から、日本への導入方法を検討するインタビュー調査を実施、活用する際に必要な要点をまとめる。 II期:2013年10月-2014年3月:アメリカ、ジョージア州立大学Dr.Kropf, Dr.Beck、またNASWジョージア州支部長Ms.Ivy,成人保護センターディレクターMr.Hayと、修復的SWおよびPIEアセスメントツールの使用法について、今後の進め方について国際研究交流し、助言や意見交換をしつつ研究を進める。上記、研究協力者とは2013年3月に面談して協議してきた。
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