研究課題/領域番号 |
22530605
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
和気 純子 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (80239300)
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キーワード | 高齢者福祉 / 支援困難ケース / ソーシャルワーク / 社会的排除 |
研究概要 |
本研究は、所得保障、医療、介護、労働などの既存の社会保障制度やサービスが十分に機能せず、通常の支援によっては問題の解決が困難な高齢者に焦点をあて、彼らが社会保障制度はもとより、経済、政治、地域、社会などから排除されるメカニズムを解明し、彼らを社会的排除から社会的包摂へとつなぐソーシャルワーク実践の在り方を提起することを目的としている。 研究2年目になる平成23年度は、以前、申請者がエンパワーメント・アプローチの翻訳を共同で行ったことのあるトロント大学のサカモト・イズミ准教授を招へいし、多文化主義を基盤としたソーシャルワークを展開しているカナダの現状について報告をいただき、多文化を生かす「芸術」を媒介した介入実践と、研究とアドボカシーの統合的アプローチについて議論した。また、スウェーデンの研究者であるエリス・マリー・アンベッケン先生からは、北欧型福祉社会において注目されている「実存主義ソーシャルワーク」および「スピリチュアル・ソーシャルワーク」の可能性について教示をえた。 また、9月に韓国・プサンで開催された第7回国際社会保障会議に出席し、「Quasi-Market of Elder Care And Its Effects on Needy Elderly People in Japan」のタイトルで分科会発表を行い、貧困高齢者が介護保険施設から排除されるメカニズムおよび支援の現状と課題について討議した。 さらに、地域における支援困難ケースの相談援助にあたる地域包括支援センターへの予備的な聞き取り調査を実施したうえで、全国の地域包括支援センターより700か所を無作為抽出し、(1)主任介護支援専門員、(2)社会福祉士、(3)保健師の3職種をそれぞれ対象に、支援困難ケースの実態および対応の状況について郵送による質問紙調査を実施した。3月末までに回収を終え、それぞれ(1)241件、(2)245件、(3)237件の回答を得た(回収率34%)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目において、福祉事務所、地域包括支援センターへの予備的な事例調査を終え、支援困難ケースへの対応について、地域包括支援センターへの全国調査(N=700 無作為抽出)を実施しえた。また、海外の研究者の招へいによるヒアリング調査を通して、文献からは把握できない、社会的包摂を志向するソーシャルワーク実践について具体的な意見交換と共同研究への基盤が構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度となる24年度は、地域包括支援センターへの全国調査の分析を行うとともに、地域包括支援センターおよび福祉事務所へのさらなるヒアリング調査を通して、より具体的な支援のあり方について検討を行う予定である。さらに、当初、現地調査を予定していたフィンランドからスウェーデンに調査地を変更し、現地におけるヒアリング調査を予定している。これらの結果は、招へいが予定される第8回国際社会保障会議で報告するほか、学術論文を作成するとともに、最終的に研究報告書をとりまとめる予定である。
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