地域に居住する支援困難な高齢者への支援は、全国に設置された地域包括支援センターの3職種(主任介護支援専門員、社会福祉士、保健師)を中心に、行政、民生委員、介護支援専門員、居宅サービス事業者等の協働によって展開されている。本研究では、平成23年度末に、全国の地域包括支援センターへの郵送調査(N=700、有効回答34%)を実施し、支援困難ケースへの対応の現状と必要な取り組みについて3職種の認識を尋ねた。平成24年度は、当該調査結果について分析を行った。 結果として、3職種には業務の分担があるが、主観的な困難の認識は異なり、社会福祉士は権利擁護や支援困難ケースへの個別相談をより困難に感じていること、社会福祉士は関連機関との連携の必要性をはじめ、ネットワーキングやチームアプローチ、自治体の後方支援の必要性を強く認識している。支援困難ケースに対する効果的な実践の確立には、権利擁護への対応等で支援困難ケースを多く抱える社会福祉士に対して、医学、介護予防、臨床的な専門療法、ネットワーキングやチームアプローチの技法の習得支援、適切なスーパービジョンの授受が必要であることを提言した。なお、調査結果の概要は調査対象者へ送付するととともに、日本社会福祉学会秋季大会(関西学院大学、10月)において分析結果を報告した。 さらに、福祉の民営化が進むスウェーデンにおいて開催された国際社会福祉会議に参加し、現地の高齢者福祉機関への訪問調査を通して、スウェーデンにおいても高齢者の重度化、民営化によるサービスの質の劣化が進展していることが判明した。また、2008年から介護保険を導入している韓国からは、南ソウル大学のYonHo Chon先生を招聘し、介護の市場化における困難ケースへの対応について日韓比較を行った。共同研究の成果は、平成25年6月にソウルで開催される国際老年学会にて報告予定である。
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