研究概要 |
本研究は、地域において、精神障がい者のリカバリーを促すためには精神障がい者の当事者組織と他の組織との間でどのような連携(パートナーシップ)を形成する必要があるのかを明らかにするためのものである。本年度においては、リカバリーという概念に焦点をあてた研究を実施した。次年度以降において、わが国において活動を展開している精神障がい者当事者組織においてリカバリーがどのように実現されているのかを明らかにするための、インタビューを用いた質的調査研究を実施することにしたが、そのための準備の作業として、国内外のリカバリーをめぐる文献を収集し、リカバリーをめぐる先行研究の状況を把握した。収集した文献より、(1)リカバリーは、精神保健福祉の専門職者において用いられる概念として広く用いられるようになった一方で、精神障がい当事者の運動を通して運動の核となる原理を構成する概念として発展してきたこと、(2)人間の発達という観点からリカバリーという概念をとらえることができること、(3)リカバリーの過程において人びと、とりわけ、ピア(仲間)である精神障がい当事者とのつながりが重要となること、(4)精神障がい当事者の文化を援助専門職者の文化に浸透させるための概念となりうること、が明らかとなった。さらに、海外文献の一部(Fisher, Daniel(2008). Promoting recovery. In T. Stickley and T. Basset(Eds.), Learning about mental health practice(pp. 119-139). Chichester, England : John Wiley and Sons. )を翻訳、冊子として印刷し、精神障がい当事者を含む、精神保健福祉関係者に配布することを通して、研究の成果を発表するだけでなく、次年度、リカバリーについて聴き取り調査をおこなうための情報提供をおこなうことができた。
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