研究課題/領域番号 |
22530607
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松田 博幸 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (30288500)
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キーワード | 地域福祉 / コミュニティソーシャルワーク |
研究概要 |
ナダ、オンタリオ州における実践の情報に加えて、ケベック州、オンタリオ州、ブラジルにおいて展開されている、精神障がい当事者が自らの服薬を主体的に管理して生活の質を高めるためのアプローチ、GAM(Gestion autonome de la medication)の内容および開発過程を明らかにするためにケベック州において開発者および関係団体のスタッフより聴き取り調査を実施した。調査の結果、以下のことが明らかになった。 1.GAMは生活の質に焦点化された服薬管理アプローチである。 GAMにおいては、まず、自らにとって生活の質とは何かがまず問われる。その後、生活の質に対する薬の影響、医師との関係に焦点があてられ、医師を変える、協力的な専門職者を探すといったことも含めた、減薬のための現実的な計画が作られ、実行される。GAMが、単なる減薬のためのアプローチではなく、生活の質を高めることを目標としてトレーニングが実施されていることが明らかになった。 2.GAMは、ケベック州における権利擁護運動、オルタナティブ運動を背景とし、研究チームの協力を経て、展開されてきた。 ケベック州においては、ressources al ternativesという概念のもとで、精神障がい者当事者活動と支援者による活動とによる協働が展開されてきた。服薬を主体的に管理するためのアプローチは、1980年代以降、精神障がい者のための権利擁護団体およびそのネットワークを通して発展してきたが、その後、ressources al ternativesの連合組織であるRRASMQ、および調査研究チームであるERASMEの協力によって、GAMが開発された。すなわち、当事者活動が他の活動と連携することを通して、精神障がい当事者のリカバリーのためのアプローチが開発されたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カナダのケベック州において、服薬管理や精神科医との関係という、精神障がい当事者にとって、生活の質やリカバリーときわめて密接に関わる事柄に焦点をあてたアプローチが、当事者主体の活動に価値を置く諸組織の連携を通して展開されてきたことが明らかになり、そのようなアプローチの内容や連携に関する貴重な情報を収集することができた。精神障がい当事者組織と他組織との連携を通して精神障がい当事者のリカバリーをうながすためのモデル作りの基盤が形成された。
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今後の研究の推進方策 |
カナダ、オンタリオ州およびケベック州における、当事者組織をめぐる組織間連携を通して生み出された、リカバリーを促進するためのアプローチの情報をさらに収集するとともに、それらをもとに、わが国において、同様の組織間連携を通してリカバリーのためのアプローチを開発するためのモデルを創出する。
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