研究概要 |
本研究の目的は介護保険制度下でのケアマネジメント実践モデルを明らかにすることである. 今年度は特に,介護支援専門員による調整・仲介機能を特化させた給付管理業務に焦点をあてて検討を行った.調査方法は参与観察法およびインタビュー法である.分析方法は定性的(質的)コーディングである.本研究の結果,調整・仲介機能を特化させた給付管理業務の構造とプロセスが,ケアマネジメント理論((1)既存サービスの優先活用,(2)総合的アセスメントの制限,(3)収益化の促進,(4)結果重視の評価,(5)機能の焦点化)および介護保険制度((1)制度適用の遵守,(2)費用計算・予算管理の遂行,(3)業務証明の必要,(4)流動的な制度,(5)判断基準の未確立)の視点からそれぞれ明らかにされた.この結果から,介護保険制度下でのケアマネジメント実践モデルには,(1)双方向プロセスの統合化,(2)目に見える成果証明の提示,(3)給付管理業務の効率化,が求められるのである. また今年度は,この間の研究成果を著書としてまとめることができた.著書題目は『ケアマネジメント実践の実践モデル-調整・仲介,給付管理,チームマネジメント』である.わが国におけるケアマネジメント実践は,多くの論者が指摘しているように,英米の理論を強く意識したものである.しかし,実際には,地域包括ケアが求められていても,介護支援専門員による業務内容の多くの部分は不透明であり,経験の伝達により各職場で細々と受け継がれている状況にある.著書はこの不透明なケアマネジメント実践に注目した.研究の結果,わが国におけるケアマネジメント実践の特性は,調整・仲介,給付管理,チームマネジメントであり,その全体構造と文脈が明らかにされた.特に介護保険制度下でのケアマネジメント実践モデルでは,介護支援専門員によるチームマネジメントの重要性が示唆された.そして,この成果はバーンアウト構造及び復帰プロセスの解明にも生かされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題は「介護支援専門員のバーンアウト構造及び復帰プロセスの研究」である.バーンアウトの問題について社会的要因の検討を中心に明らかにしている.その場合,わが国におけるケアマネジメント実践の構造とプロセスを提示し,特にチームマネジメントに焦点をあてて,その不適応状況として介護支援専門員のバーンアウトを理解している.このように,チームマネジメント能力の育成方法も含め,現状のバーンアウト問題を多角的に検討しているためである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き,介護支援専門員のバーンアウト構造及び復帰プロセスについて聞き取り調査を行い,データ分析と理論の生成を行う予定である.しかし,バーンアウト問題の明確化は,個人の内面に深くかかわる行為なので,多くの対象者から聞き取り調査を行うには限界がある. したがって,バーンアウトを引き起こす要因として,介護支援専門員のチームマネジメントへの不適応に着目する.チームをマネジメントできない構造とプロセスについて,データ収集とデータ分析を通して理論化することで,バーンアウトを未然に防ぐ対策を提言するものである.具体的にはチームマネジメント育成プログラム,育成システムとして提言を行うものである.
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