「ワークフェア」(アクティベーション策)の視点をもって、「積極的連帯手当(RSA)」を提言したイルシュ高等委員会における論議と作業および報告文書の分析をおこなった。RSAは従来の失業者対策ではなく、子もちのワーキングプアに的を絞った制度改定であることを把握できた。 RSA登場は2000年代のEUの好況を背景としている。したがって、2008年のリーマンショック後の現状において、受給状況は制度の意図(就労を促進させ、過小所得を扶助で補足し、貧困を減少させる)とはそぐわなくなっていることも現地調査(9月20日~10月11日)で明らかになった。RSAの前身である参入最低限所得(RMI)と同様に、不就労・失業者の受給が中心であり、彼らの扶助額を引き上げなければ、貧困の減少は不可能になっている。これは貧困論の変容にもかかわるもので、従来社会的排除論への傾斜から、再度失業・経済的貧困が貧困論の中心になっている。この点についての詳細は今後の研究課題である。 RSAの運営組織である家族手当金庫(CNAF)において、RMIおよびひとり親手当(API)制度からの運営組織の改変などについて説明を受けた。とくに、県行政の役割が拡大し、市の福祉事務所のそれは縮小し、むしろ後者は社会保障組織であるCAFに取って代わられたとみてよい。RSAは、RMI以上に社会扶助ではなく、無拠出社会保障給付としての性格を強めている。 ワークフェアの効果として、RSA受給者の(再)確保した職業教育および雇用の「質量」の把握については、来年度の課題となった。
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