1)サルコジ政権下(2005年5月-2012年5月)の、とくに2011年のL.ヴォキエ・ヨーロッパ問題担当相を初めとするRSA受給者に対する非難の社会的背景、そのバッシングをめぐる研究者・団体などの論評を検討し、フランス社会の貧困観の変容を見た。バッシングの社会的背景は、扶助のアクティベーション策の失敗、増大したワーキングプアと扶助受給者(無業・失業者)との軋轢である。そして、以上から就労による社会的包摂論、社会的排除論に基づく貧困の捕らえ方への疑義が生じていた。 2)失業給付やRSA制度におけるアクティベーション=個別支援の具体的状況を、それぞれの支援現場において調査したが、前者においては就労促進よりも当該者(とくに長期求職者)の求職者登録の抹消、後者では求職活動に至らせるよりも前段階の求職準備(個々のエンプロヤビリティを形成させる資格・免許取得など)に腐心していた。 3)アクティベーション策の強化にもかかわらず、パッシブとされる経済給付の受給者増が顕著であることを確認した。ヨーロッパ経済危機の中で、失業はうなぎのぼりに上昇し(失業率は10%に近接)、RSAの就労手当・個別支援による「完全就労」は遠のき、逆に経済給付などの保護による貧困への対処の必要性が再度唱えられるようになっている。 4)RSA・扶助者へのスティグマ=「罪責感・culpabilisationを与える動き」をストップさせるための施策の提言(・特化した給付の見直し・保険給付と扶助給付の連続的権利など)が行われていることを確認できた。
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