本研究は、医療ソーシャルワーカーが相談支援を行う場としての医療福祉相談室に、望ましい環境条件を明らかにすることを目的としている。平成22年度は、その実態を把握するため、広島県内の医療ソーシャルワーカーを配置する一般病院を対象に、医療福祉相談室の実測調査を行って、専用の面接室及び事務室の有無・室数・面積・院内での位置・動線・採光・明るさ・通風・換気・冷暖房・防音・備品等の状況を確認した。また合わせて医療ソーシャルワーカーに対する聴き取り調査を行い、現在の医療福祉相談室の問題点や使用するうえで要する配慮、環境条件が相談支援業務に与える影響等について確認した。平成22年度中に計36ヶ所の調査を行った結果、医療ソーシャルワーカー専用の面接室を有しているのは27ヶ所(75.0%)であったが、内10ヶ所(27.8%)は面接室と事務室の分離が不十分であったり、廊下の一角をパーテーションで仕切る簡易な構造であるなど、個人情報保護のうえで問題の多い状況であった。またソーシャルワーカー専用の面接室を持たない病院は9ヶ所(25.0%)あり、この内6ヶ所は他部署と共同で使用する面接室を有していたが、3ヶ所は応接室や処置室、物置などで面接を行っていた。また、窓がない面接室が多くを占めており、そうした面接室については全ての病院で採光、換気や強い閉塞感などの問題が訴えられた。近年ソーシャルワーカーの配置は進んでいるが、相談支援には不適切な環境の病院が多くあり、採用に医療福祉相談室の整備が追いついていない現状が確認された。この調査は平成23年度も継続して行っており、さらに詳細な実態解明を行う予定である。
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