研究課題/領域番号 |
22530620
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
山口 光治 淑徳大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90331579)
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キーワード | 社会福祉関係 / 高齢者虐待 / 養護者支援 / エンパワメント / 虐待予防 / 認知行動療法 |
研究概要 |
本研究の目的は、高齢者虐待を防止するために、被害者である高齢者の側に立ち、虐待をしている養護者への対応方法論を検討し、虐待防止実践に役立てていくことにある。23年度は、研究の2年目として前年度策定した「高齢者虐待防止のための養護者対応方法論の予備的仮定」の修正と理論化に取り組んだ。 1.方法:「高齢者虐待防止のための養護者対応方法論の予備的仮定」に対し、地域で虐待対応している実践データの分析やアルバート・エリスのABC理論の適用を繰り返しながらデータを積み上げていく、循環的な取り組みを行った。5地区の実践現場での「高齢者虐待事例」と「虐待者への対応方法の収集」、「その解釈」というサンプリングをもとに、討議を通して練り上げ、修正し、現実の高齢者虐待を防止するための養護者対応方法論として構築を試みた。 2.結果:(1)高齢者虐待事例を分析すると、虐待の発生には環境要因と個人的要因が影響しているのではあるが、ある出来事(きっかけ)があって虐待行為という結果に至る間に、「虐待者の信念」が強く影響していることが推測された。(2)虐待行為には「虐待者自身にとってその行為の意味がある」ということが示唆された。 3.考察:(1)虐待行為をABC理論によって分析的に見つめることで、虐待対応の際に意識していなかった「虐待者の信念」に目を向けることができた。(2)虐待者の信念や虐待行為の意味は、これまでの人生で身につけてきたものであるとともに、他者との関わりによって変わる可能性もある。(3)虐待への対応は、虐待状況を包括的にとらえ、虐待者の抱える課題をアセスメントし、1)環境要因に対して社会資源を活用して働きかけるとともに、2)虐待者の信念を認識し、それが変化するような内面への働きかけが重要である。今後の課題として、実践現場とともに、さらに具体的な対応方法論について検討を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は、5地区の実践現場でのサンプリングを行い、討議を通して練り上げ、修正していく作業が主であったが、調査先の都合により調査の実施が遅れたことが影響した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は最終年となるので、前年度の進行が遅れている高齢者虐待を防止するための養護者支援方法論の策定を早めに進めていく。そして、研究者と高齢者虐待防止実践者との協働で研究を進め、構築された養護者対応方法論について実践現場へフィードバックし、内容を更に精査しながら、その成果を報告書や学会発表を通して普遍化し、高齢者虐待防止実践現場において活用可能なものに完成させていく予定である。
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