本研究の目的は、高齢者虐待を防止するために、被害者である高齢者の側に立ち、虐待をしている養護者への対応方法論を検討し、虐待防止実践に役立てていくことにある。最終年度の今年度は、養護者対応方法論の精査と実践へのフィードバックをテーマに、研究委員会を年3回開催し、実用化に向け以下の取り組みを行った。 前年度得られた知見、特に虐待への対応は、環境要因に対してとともに、虐待者の信念を認識し、それが変化するような虐待者自身の内面への働きかけが重要であることを確認する意味で、まず、研究協力者の実践地において実際に発生した高齢者虐待事例を分析し、虐待をしている養護者への対応方法を振り返る事から始めた。そして、どの支援段階に、どのような支援方法(アプローチ)を用いたかについて整理した。その結果、主として5つの支援方法に整理できた。そのなかには「認知行動理論・アプローチ」が含まれ、養護者支援に必要で重要な方法論の一つであることが明らかになった。そこで、各地域において、虐待をしている養護者自身に働きかけ、養護者の信念が変化しうる「認知行動理論に基づくアプローチ」が実践され、普及されていくために、認知行動理論の基礎知識や支援者の視点、支援の展開方法を具体的にまとめるとともに、それを補助する「養護者による高齢者虐待対応のための整理シート①②③」「図解シート1」「自記式シート」を作成した。 3年間の本研究の成果は、『研究報告書』の中に盛り込み、特に「認知行動理論に基づくアプローチ」が各自治体や地域包括支援センター等において実践されていくことを後押しする手引き書としての役割を期待し、公刊した。また、25年度においては、この研究成果を日本高齢者虐待防止学会等の学会、日本社会福祉士会全国大会等で情報発信する予定である。
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