研究課題/領域番号 |
22530624
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
金子 光一 東洋大学, 社会学部, 教授 (30255153)
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研究分担者 |
山本 真実 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (20337695)
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キーワード | 社会福祉 / 公的責任 / 多元化 / 社会福祉政策 / 公私関係 |
研究概要 |
本研究は、民間社会事業が公的なサービスを補完する役割を果たしてきた日本と、民間非営利部門が公的部門と一定の排他的関係を維持しながら発展してきたイギリスの福祉サービスの歴史的変遷を比較検証しながら、今日の両国の公的サービスの役割と責任を、地域を基盤とする福祉サービスの現状から検証することを目的とする。 平成23年度は、イギリス、ブリストル大学SPS(School for Policy Studies)を拠点として、イギリスの福祉サービスの公私関係の歴史に関する史資料の調査、ブリストル市内の行政機関やCouncil House、ブリストル市内(特に北西部)のNGOにおいて、ヒアリング調査を行った。その結果の一部は、『世界の社会福祉年鑑2011』のイギリス「概観」「制度・政策の展開」(pp.75-84)および「児童・家庭」(pp.98-103)で公表した。 日本の福祉サービスの公的役割や責任に関する調査は、主に文献を通じて行ったが、公的部門と民間部門の委託関係や権限移譲の実態を知るために、新規事業を展開している民間組織(営利・非営利)の責任者にヒアリングし、公的部門から民間部門が事業を受託する際の規制や留意点に関する情報を入手した。 以上の調査で明らかになった成果は、研究代表者が、平成23年10月8日に淑徳大学で行われた日本社会福祉学会第59回秋季大会の歴史教育に関連する特定課題セッションで報告した。そこでは、イギリスと日本の公私関係の歴史を比較検証することにより、公的部門の位置づけと役割は、それぞれの社会的・文化的背景により異なっていることを主張し、日本の公的部門の新たな役割を思考する場合に求められる事項を提起した。この研究報告を基礎としてまとめたのが「社会福祉における公的部門の役割に関する史的考察」(pp.20-37)古川孝順監修・社会福祉理論研究会編『社会福祉の理論と運営-社会福祉とはなにか-』(筒井書房)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年3月11日に起こった「東日本大震災」という未曾有の大規模地震災害を受け、社会福祉学研究者は、学術的な視点から諸課題を提起していくことが社会的責務となった。研究代表者も、一般社団法人日本社会福祉学会の東日本大震災特別企画委員会委員長として、復興・復旧に向けた公的部門、民間部門の実践活動を検証し、地域を基盤とする福祉サービスの多元化のあり方を探究している。そのため当初予定していた研究計画を一部変更せざるを得なくなり、若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、基本的に交付申請書に記載した研究計画に即して進めることを予定している。但し、甲請時に予定していた平成24年度のイギリス、ブリストル大学SPS(School for Policy Studies)での海外特別研究(1年間)が、研究代表者の公私の事情で延期となった。そのため、イギリス内の主要都市において展開されている多元的な福祉サービスの現状を把握し、とくに地域戦略として実施されているネットワークの効果と問題点を、中央政府との関係などを広範囲にわたって調査することはできなくなった。しかしながら、研究代表者が短期間イギリスに滞在することは可能であり、また研究協力者のブリストル大学のスタッフが、前年度(平成22年度)のインタビュー調査などで不十分であった点を補い、追加的な現地調査を実施してくれることになっているので、連絡を取り合い、研究を遂行していく予定である。
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