ソーシャルワーク領域における研究では、二者関係に焦点化された研究は数あるが、連携の有効性を実証する試みは少ない。本研究では、視点を拡げ、多職種、他領域の専門家、当事者等を含めた調査を通して、多職種連携やコンサルテーションの現状と課題を把握し、人権を擁護するという視点から、連携の有効性を実証することを目的とした。 2010年度は、福祉専門職のコンサルテーションを中心に日本の教育や研究の現状、関連領域における研究に関して文献研究及び医療・法律の専門家4名を対象としたインタビュー調査を実施した。その結果、経験豊富で、他職種と協働する場面を多く経験しているソーシャルワーカーは一定のニーズに基づいて、コンサルタントとしての役割を果たしている可能性が高いことが示唆された。2011年度は障害当事者15名を対象とした個別インタビューを実施した。その中では、専門職との関わり合いの中で、自分たちの権利というものを意識化するプロセスが提示された。最終年度は2年間のインタビュー調査を整理したうえで、多職種を対象としたグループインタビューを4カ所で実施した。その結果、多職種連携や協働により、専門職自身が磨かれ、視野の広がりを持てるようになること、当事者のニーズへの多面的なアプローチが可能となり、本人が望む生活を実現する方法が多様になることが示された。また、他職種・他領域との連携や協働は、当事者の望む生活の実現を共通の目標にしながら、インフォーマルな資源との連携を促進し、地域社会における差別や偏見の除去にも貢献していることが明らかとなった。 現段階では、保健・医療・福祉現場での「連携」や「協働」と「コンサルテーション」の相違や相互の位置づけを明確に定義するには議論や実積が積み上がっていないが、他職種・他領域との連携や協働が当事者の生活における権利を支えていることは調査の結果から明確化することができた。
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