研究概要 |
特有のコミュニケーション障害を呈する失語症者は,他者との関係が希薄になることにより実存的危機に直面しやすい.また,失語症者をケアする家族介護者は患者との円滑な意思疎通が困難となり,十分なケアが提供できず高度のストレスに曝される.そのため,失語症者とその家族には様々な心理社会的問題が生じやすい. 本研究では,メディカル・ファミリー・セラピー(Medical Family Therapy : MFT)の理論と技法に基づく心理社会的教育介入プログラムを開発し,その介入効果についての実証的検証を行い,広く啓蒙活動を実践することを目的とする. 平成22年度は,家族教育介入のプライマリーアウトカムとなる,失語症者とのコミュニケーションにおける家族介護者の自己効力感に関する評価尺度(コミュニケーション・セルフ・エフィカシー : Communication Self-Efficacy : CSE)を開発し,その臨床的有用性について検証した. また,脳卒中発作後の抑うつ症状(Post-Stroke Depression : PSD)は,リハビリテーションの阻害要因であり,PSDの早期発見と早期治療は,失語症リハビリテーションにおいて重要な臨床課題である.そこで,Sutcliffe & Lincolin(1998)が開発したThe Stroke Aphasia Depression Questionnaireの日本語版(J-SADQ)を標準化し作成した. 現在は,本邦の実情にあわせたMFTの介入マニュアルを作成中である.今後は,介護負担感とコミュニケーション・セルフ・エフィカシーとの関係を明確化し,MFT効果を検証するための一事例研究法による予備的研究を行う予定である.
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