本研究の目的は、都市高齢者の新たな「孤立」の諸相に着眼し、その「孤立」から生じる生活課題を析出し、その課題解決にむけたソーシャルワーク実践方法の開発を、日本と韓国との比較研究という方法を使いながら明確化することにある。日本ではI県I市において高齢核家族世帯を対象に、日常生活行動と社会関係に関する調査を実施し、その分析を行った。また、65歳以上で介護認定を受けていないあるいは一人暮らし世帯の登録をされていないという高齢者を10分の1抽出し、記名式アンケート調査を実施、認知症の症状ならびに生活支援の必要度を測定した。その結果、初期症状を自覚している高齢者の存在が析出され、それらに対するアセスメント調査を自治体の専門職により行い、ケースカンファレンスを行い、訪問を1年にわたって継続し、支援を行った。 韓国においては、S市の総合社会福祉館を中心とした専門職(社会福祉士)により地域支援体制へのヒアリングならびに事例検討を行った。こうした調査によって明らかになったことは以下のようである。①韓国の総合社会福祉館が行っている専門職による個別調査はとかくに潜在化しがちな“早期問題群”を適切に発見、ニーズキャッチすることにより、「見守り」を地域の中に張り巡らせることが可能となり、地域における「安心感」を醸成してきている。②一方、日本では介護保険制度の申請原則に依存するあまり“早期問題群”を発見する機能が自治体にはなく、“早期問題群”をそのまま家族の中に内包してしまいがちであり、その結果、重度化してはじめて顕在化するという現象を生み出している。③こうした重度化の背景にあるのが、地域社会からの孤立化であり、情報過疎、家族介護中心、医療依存などが存在することが明らかとなった。④こうした“早期問題群”への専門職の適切な関わり方が今後の課題であり、リーチアウト、介入型ソーシャルワークの開発が鍵である。
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