当該年度には、過去に実施した独居高齢者調査の再分析による孤立高齢者の特性把握と、高知県日高村社会福祉協議会で取り組まれている独居高齢者への住民による見守り活動(小地域ネットワーク会議)のデータ管理ソフトの開発およびデータ収集に取り組んだ。 前者については、2007年~2009年に実施した高知県下3町村(中山間)と東京都板橋区(大都市)における独居高齢者調査の再分析によって、孤立を他者との交流頻度が週に1回に満たない状態と定義した場合、1)孤立傾向にある高齢者のなかでも一定の多様性はあるが、多くは低所得や劣悪な住環境、健康面の問題を同時に抱えていること、2)孤立者のなかでも複数の生活問題を抱えた高齢者ほど孤独感が強い傾向にあること、3)地域特性に関わらず、男性および未婚ないし離別経験は孤立の規定要因であること、4)大都市では低所得が孤立と関連するのに対し、中山間では身体機能の低下が孤立と密接に関連していることなどが新たに明らかにされた。 後者については、対象地域での実践的・実務的な課題を踏まえて「小地域ネットワーク活動支援データ管理ソフト」の試行版を開発した。本ソフトによって、当活動にかかる管理業務の負担軽減と事業実績の明確化を図りつつ、要援護高齢者と見守りをしている近隣の人びととの交流についてダイアド単位のデータを縦断的に把握することが可能となった。現在、年2回開催される小地域ネットワーク会議においてデータを更新・蓄積している段階であり、来年度には当該事業が独居高齢者に及ぼす効果の評価に取り組む。
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