研究課題/領域番号 |
22530637
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
斉藤 雅茂 日本福祉大学, 地域ケア研究推進センター, 主任研究員 (70548768)
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キーワード | 高齢者 / 社会的孤立 / 中山間地域 / 地域福祉 / 小地域ネットワーク活動 |
研究概要 |
当該年度には、研究課題〔A~E〕のうち、〔A〕過去に実施した調査データの再分析、〔C〕住民による見守り活動の実績と効果評価、および、〔D〕孤立概念の精緻化にむけた意見集約に取り組んだ。 Aについては、高齢者の社会的孤立は、孤独死や自殺といった事例だけでなく高齢者全般の要介護や死亡にも有意な関連があり、電話等による非対面接触よりも見守りや訪問といった対面接触が重要であることが新たに示された。 また、孤立は独居者だけの問題でないこと、孤立者の多くが抱える所得の低さは公的サービスへのアクセシビリティを下げていること、孤立と密接に関連する閉じこもりには個人要因だけでなく祭の衰退など地域要因も関連していることなどが新たに確認された。 Cについては、小地域ネットワーク活動支援データ管理ソフト(試行版)を導入し、181名の見守られる独居高齢者、241名の見守り協力員の情報が得られた。その上で、当該地域の見守り活動では、独居者は平均して1.96人に見守られていること、既に男性の協力員が一定程度参加し同性や同年代に偏ることなく見守りが展開されていること、山間地域では多くの人に見守られていることが確認された。他方で、女性独居者の方が多くの人に見守られる傾向にあり、男性への見守り強化の必要性が明らかにされた。また、見守り協力員への追加調査を実施し、109名の回答を得ることができた。来年度は上記のデータベースと結合した上で当該活動の効果の検討を充実させる。 Dについては、対象地域の保健福祉従事者(社会福祉協議会や民生委員など)12名を集めたフォーカス・グループ面接を実施し、社会的孤立の操作的定義に関する意見を収集した。その結果、孤立を捉える上で本人が「親しい人」と認識していない他者も重要であること、簡便な基準としては月に2、3回(週に1回より少ない)以下は概ね孤立状態を捉えていることなどが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたデルファイ法調査は実施できなかったが、その代替として見守り活動関係者へのフォーカスグループ面接を実施し、孤立概念の精緻化にむけた情報収集は予定通り行われた。加えて、見守りの効果を評価するために見守り関係者への質問紙調査を新たに実施することができた。さらに、他の研究プロジェクトのデータを利用できるようになり、目的〔A〕にあった再分析が当初の計画以上に充実し、予定以上に研究成果を発表することができた。その一部として、今年度の学会報告では2本の表彰を受けることができた(第27回日本老年学会総会合同ポスター優秀賞、第22回日本疫学会学術総会ポスター賞)。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、本研究課題は順調に進捗しており、研究計画の変更は予定していない。最終年度には目的〔E〕の「見守り対象となった独居高齢者事例に基づく見守り活動の質的評価」に取り組み、3年間の成果取りまとめを行う。推進方策に関しては、当初の計画通り、高知県日高村社会福祉協議会の協力を得ながら課題を進める予定である。なお、研究代表者の所属変更に伴い、現地へのアクセスが悪くなることが予想されるが、その場合には、社会福祉協議会職員などに事例収集を依頼することも検討している。他方で、他の研究プロジェクトとの共同によって利用可能なデータが大幅に拡張したため、より大規模なデータに基づいて、高齢者の社会的孤立と他の指標との関連、および、社会的孤立の操作的定義に関する基準関連妥当性の検証をより充実させる予定である。
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