研究課題/領域番号 |
22530639
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
片山 善博 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (60313433)
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研究分担者 |
伊藤 文人 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (40367727)
三崎 和志 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (40506961)
池谷 壽夫 日本福祉大学, 子ども発達学部, 教授 (90136367)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 福祉思想 / ケア / 承認 / 自立 |
研究概要 |
今年度、研究代表者は、おもに、本研究の理論的な基礎をなす承認論についての研究を行った。具体的には、ヘーゲル『精神現象学』(理性章B)の文献研究を通して、その中で展開されている近代的な主体性の成立過程が、ヘーゲルの相互承認論の具体的な展開にとってどのような意味をもっているのかを考察した。その成果の一部は2013年2月の「日本ヘーゲル学会」の公開セミナーにて報告した。またその報告をもとに論文を作成しているところである。また、カントの『判断力批判』の中で展開されている「共通感覚論」とヘーゲルの『精神現象学』の中で展開されている「相互承認論」の問題関心のつながりから、現代の福祉思想における人間論の可能性を考察した。この点については次年度の課題につながると考えている。 今年度も、研究分担者との研究会を定期的に行った。とくに次年度の報告書作成に向けて、研究代表者と各研究分担者は、それぞれの問題意識(とくに自立、ケア、包摂、排除、労働、ジェンダーにかかわるテーマ)の明確化と、現在の研究状況(イギリスにおける、社会政策にかかわる社会理論の分析や「社会的包摂」に関する文献、グローバル化、ネオリベラリズムを見据えた福祉思想の動向、アメリカとドイツにおける「ケア論」や「ジェンダー論」、「傷つきやすさ」など)について報告・発表を行った。こうした報告・発表を踏まえて、研究代表者および研究分担者は、現代の福祉思想の現況と課題についての報告会も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、文献研究を中心に定期的に研究会を開催した。ベーシックインカムなど新しい福祉動向なども踏まえながら、研究代表者、分担者がそれぞれ自己の課題について報告をした。2年目も初年度同様、文献研究を中心に、より哲学的な議論も行うようにした。3年目は、福祉全体の動向も踏まえつつ、研究代表者、分担者の基本的な視点を明確化していった。研究代表者は、主に、承認論など現代の福祉思想を構想するうえでの基礎理論を研究してきたが、その成果も少しずつ現れてきている。最終年度の最終報告書作成に向けて、成果の一部の論文化を行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の課題は、これまで十分に研究されてこなかった、ポスト福祉国家における「承認論を軸とした福祉思想」を構想することであるが、この課題は、福祉思想の構想にとどまらず、より広い視野から現代の公共性論や正義論なども踏まえた社会理論の構築も射程に収めている。本研究は、現在のところは福祉理論(ケアや傷つきやすさ、共感、承認など)に限定しているが、こうした研究は、より広い社会理論構築のひとつの足がかりになりうると考えている。私自身ヘーゲルの承認論を軸に考察を行っているが、カントの『判断力批判』における「共通感覚論」やフィヒテの「承認論」なども踏まえてより一層の哲学的な基礎付けを行いつつ、現代のさまざまな社会理論や福祉の現状との理論的かつ実践的な接合を行うことで、同研究の推進を図っていきたい。
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