研究課題/領域番号 |
22530644
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
井上 恒男 同志社大学, 大学院・総合政策科学研究科, 教授 (20367973)
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キーワード | 高齢者 / ケアホーム / 医療ケア |
研究概要 |
1ケアホーム入所者に対する医療ケア・・・全国実態調査を実施したCare Quality Commissionへの聴取り取材及び最終報告書(平成23年3月)により、入所者への医療ケアの現状・課題を把握した(同調査データの限定的なところは、英国看護協会等による別途分析により補完)。保健医療との連携、施設職員の研修等について、今後の国内議論の展開が注目される。 2ケアホームに対する病院のサポート事業・・・Leicester病院の老年内科医が地域の医師、保健師と連携し、ケアホーム入所者を巡回診療する取組みを視察した。入所者に対する事前ケア計画作成や緩和ケアへの助言により不必要な入院が減少し、平均入院費用が半年間で16%減少したとの分析は興味深かった。 3介護職による医療ケア・・・介護職による医療ケアに関する制度、課題等について英国看護協会を聴取り取材した。非看護職の役割拡大の議論はあり、看護師が業務の一部を非看護職に委任する際の職業倫理コードもあるが、介護職の専門職資格化、養成体系が未確立なため、個々に判断しているのが現実。介護職の役割拡大等を提言している研究者も取材したが、実務的な議論には進んでいない様子。 4施設入所者の一貫ケア・・・医療依存度が重度化してもナーシングホームへの転所を迫られないよう施設サイドが体制を整備するオーストラリアのageing in place方式を実地視察した。 入所者の医療依存度が重度化しているにもかかわらず施設ケアの体制、職員養成等が未整備なことは我が国と同様であることが確認でき、今後の対策の展開に注目していきたい。また、実地調査の際に国際セミナー(介護費用負担問題)で日本の介護政策の動向について発表する機会を持て、今後さらに研究交流ネットワークが広がることを期待したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
入所者の医療依存度の重度化の動向とそれに対する介護、保健医療ケアの現状や課題、看護・介護専門職の委任・責任関係等について全体像が次第に判明してきた。施設実地訪問のアレンジは先方の意向に左右されるので容易ではないが、英国研究者との接点は多少できたので、今後のリサーチにプラスになると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
ケアホーム入所者の医療ケアが不十分との実態調査等の指摘を踏まえ、政府・自治体がどのような対応策を講じていくのかについて動向をフォローする。 かかりつけ医の訪問診療の現状や課題については文献調査等である程度握できているが、できれば実地取材を試のみたい。 看護師業務の独立性と医師指示の交錯については不明な点が多々残っているので、引き続き文献調査するともに実地調査に際に取材を試みる。ケアホーム固有の論点があるのかどうか判明しなかった場合は、一般論として整理することとしたい。 オーストラリアが施設ケアにおいてもageinginplaceという視点で政策を展開している点が興味深かったので、今後の英国実地調査の際に調整可能な範囲で近隣欧州諸国での取組みも取材を追加したい。
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