研究課題/領域番号 |
22530648
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
浜井 浩一 龍谷大学, 大学院・法務研究科(法科大学院), 教授 (60373106)
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キーワード | 少子高齢化 / 高齢化 / 犯罪者処遇 / ソーシャルワーカー / 触法 |
研究概要 |
本研究は、少子高齢化によって、犯罪や犯罪者がどのように変化し、それに対応する犯罪者処遇(更生)がどうあるべきなのかについて司法と福祉の連携という視点から検討することを目的としている。平成23年度は、少子高齢化が警察統計・刑事司法統計に与える影響、特に検挙人員や受刑者人員に与える影響について分析した。犯罪学の分野ではよく知られた事実であるが、犯罪の出現率は年齢によって異なる。思春期から徐々に非行が始まり、青年期でピークを迎え、そして、就職、結婚を経て加齢とともに犯罪の出現率は減少していく。結果として、少子化は、犯罪の担い手である若年者の減少につながる。分析の結果、検挙人員は少子化に比例して減少していることが明らかとなった。ただ、1995年以降、日本では30歳以降の犯罪の出現率の減少が止まったことにより、高齢犯罪者が人口の高齢化率を超えて増加していることも判明した。 また、平成23年度は、刑事司法と福祉との連携、その中でも刑事司法におけるソーシャルワーカーの役割に焦点を当てつつ、イタリアにおける犯罪者処遇の現状を調査した。その結果、イタリアにおいては、刑事司法に限らず、社会的弱者に対する支援が行政区分による縦割りではなく、地域を基盤として、横のネットワークを中心に運営されていること、その中核として、刑事司法を含む様々な機関にソーシャルワーカーが配置され連携を図っていることが分かった。そのネットワークには、社会協同組合など民間の受け皿も整備されていることも併せて確認できた。 さらに、当初の研究計画に加えて、触法高齢・障害者の更生に対する弁護士の意識調査を実施した。その結果、多くの弁護士が被疑者・被告人の知的障害の兆候を見落としている可能性のあること、知的障害に関する弁護士研修が必要であること、触法高齢・障害者の国選弁護活動においては、その報酬において特別加算が必要であることなどが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前記のように、本研究は、少子高齢化によって、犯罪や犯罪者がどのように変化し、それに対応する犯罪者処遇(更生)がどうあるべきなのかについて司法と福祉の連携という視点から検討することを目的としている。平成23年度までに、少子高齢化が検挙人員や受刑者人員に与える影響についての分析が概ね終了するとともに、司法と福祉の連携についても、イタリアに関する調査が進み、下記研究発表に記したように、それらの成果を犯罪社会学会の機関誌において発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、イタリアに関する調査結果をまとめるとともに、時間が許せばノルウェーやスコットランドについても、司法と福祉の連携という視点からより詳しい調査を実施したい。また、次年度には、出版、講演会の開催、学会発表など研究成果の公表にも力を入れたい。
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