本研究では、少子高齢化によって、犯罪や犯罪者がどのように変化し、それに対応する犯罪者処遇(更生)がどうあるべきなのかについて司法と福祉の連携という視点から研究を進めてきた。その結果、少子化は、犯罪の担い手である若年者の減少につながるため、少子化に比例して検挙人員そのものが減少していることが明らかとなった。ただ、1995年以降、日本では30歳以降の犯罪の出現率の減少が止まったことにより、高齢犯罪者が人口の高齢化率を超えて増加していることも判明した。 刑事司法と福祉との連携について、イタリアにおける犯罪者処遇を調査した結果、イタリアにおいては、刑事司法に限らず、社会的弱者に対する支援が行政区分による縦割りではなく、地域を基盤として、横のネットワークを中心に運営されていること、その中核として、刑事司法を含む様々な機関にソーシャルワーカーが配置され各機関の連携が図られていることが分かった。 平成24年度は、イタリアにおける調査を継続しつつ、研究成果のまとめを行った。具体的には、平成24年10月28日に行われた犯罪社会学会の年次大会において、テーマセッション「被疑者・被告人となった触法高齢・障がい者への支援と処遇(司法と福祉の連携)」を企画し、イタリアでの取り組みについて報告した。さらに、イタリアにおける犯罪者処遇の取り組み、特にソーシャルワーカーや民間の社会協同組合の役割について焦点を当てた研究成果を報告するため単著『罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦-隔離から地域での自立支援へ』(2013年・現代人文社)を刊行した。最後に、研究成果の総まとめとして、イタリアで受刑者を雇用してビジネスとしても成功している社会協同組合「パウザ・カフェ」からアンドレア・ベルトラ氏らを招いて「罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦」というタイトルで国際シンポジウムを龍谷大学にて開催した。
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