中途失明者(中途視覚障害者)の雇用継続を実現するために必要な支援を研究するにあたって、中途視覚障害を理由に解雇、または障害者差別が要因となってうつ病を発症し、病気休職期間満了による自動退職となった2事例が提訴した民事訴訟について、平成24年度に引き続き追跡調査を行った。平成24年度成果報告の時点では、事例1については第一審で解雇無効を勝ちとるも、企業側が控訴し、裁判は高裁に持ち込まれた。事例2については第一審の判決待ちの状態であった。その後の経過を以下に述べる。 <事例1>裁判官が強く和解勧告を行い、原告と弁護士で熟慮の結果、第一審の解雇無効判決を残すために、和解に応じることとした。退職は自動退職日の合意退職とし、ただし和解金としては、企業側主張の百万円単位の金額ではなく、一千万円単位の金額が支払われた。 その後、原告は訴訟経験を公にして就職活動を行い、障害者雇用枠での採用で3社から内定を獲得した。現在は大手IT企業のリスクマネジメント・コンプライアンス部に勤務している。 <事例2>第一審では原告側主張は全く認められず、全面敗訴となった。第一審では、障害者差別そのものよりも、原告が退職にいたったうつ病が、障害者差別を発端とする労働災害であることを焦点に争われたが、この争点は原告の本望ではなく、原告は障害をもつ労働者の人権侵害としての訴訟を希望していた。この点について原告は、、原告と職場有志による支援の会や、担当弁護士との意思疎通がうまくいかず、うつ病を患う原告にかえってストレスとなっていること、裁判が原告中心になっていないという悩みを抱えていた。原告は高裁に上告したが、判決は覆らず、再度敗訴した。この判決を受けて、支援の会は活動を終結したが、原告は担当弁護士を障害者差別を専門の一つとする弁護士に変更し、第一審の審理に不十分な点があるとして審理差し戻しを求めて最高裁に上告した。
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