本研究の最終年として、聴覚障害者への専門的相談支援活動をおこなっている「聴覚障害ソーシャルワーカー」を対象に、昨年度からの継続調査として第2次インタビュー調査を実施した。 第2次インタビュー調査では、第1次インタビュー調査で生成した「聴覚障害ソーシャルワーク」の枠組みをもとに、多数派の聴者社会と、聞こえない人たちのろう者社会との関係性で生じるさまざまな生活上の諸問題に介入する「聴覚障害ソーシャルワーカー」に焦点をあて、専門職として必要な資質や知識・技術といったコンピテンスを、探索的研究をおこない生成した。 調査結果から、「聴覚障害ソーシャルワーカーには、ソーシャルワーカー全般に必要なコンピテンスに加えて、①多様な存在である聴覚障害者の理解 ②クライエントに応じたコミュニケーションスキル ③幅広い相談内容への対応力 ④制度に関する知識 ⑤社会資源の知識 ⑥IT機器活用術 ⑦アドボカシー の7つのコンピテンスが必要である。」ことが明らかとなった。それ故に、手話通訳者を介して聴覚障害者への相談支援をおこなうのではなく、これら7つのコンピテンスを修得した「聴覚障害ソーシャルワーカー」が、その専門性を活かした実践をおこなうことが重要であることをエビデンスに基づき指摘することができた。これにより「聴覚障害ソーシャルワーカー」の設置の意義が明確となったため、今後は、これらの専門性を修得した「聴覚障害ソーシャルワーカー」が増加することが期待される。 海外研究についてはイギリスを訪問し、聴覚障害者を対象とするソーシャルワーカーやサイコロジストより情報収集するとともに、本研究に類似したテーマで研究をおこなっている大学教員からも貴重な情報および示唆を得ることができた。
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