研究概要 |
平成23年度は,一般施設利用者における補助犬法周知度および補助犬関連知識,住宅を含む施設26種の利用における補助犬との共存意識("1.利用したくない~5.まったく気にならない"の5件法)について明らかにすることを目的として調査を行った。調査対象者は,インターネット調査会社に登録された成人男女(20歳~60歳代),計3000名であった。法周知度に関しては,"名称も知らない"人が64%を占めており,補助犬法施行直後の55.3%(松中・甲田,2008)からさらに増加していた。法の内容まで知っている人は全体に少数であったが、女性は男性より、また60歳代は他の年代よりもよく知っている傾向がみられた。共存意識については,男性より女性の方が高いことが示されたが,年代差はみとめられなかった。施設別の共存意識は,動物園やキャンプ場といった余暇活動のための屋外施設においては比較的高く、飲食店、パチンコ店、コンサートホールなどでは低い傾向が見られた。受け入れの努力義務のみが課されている住宅施設に関しては、全対象施設の中では,中程度の共存意識であった。補助犬法についてよく知っているほど,また,補助犬への接し方をよく知っているほど,共存意識が高いことが示された。 本研究の結果より,補助犬法の周知がいまだ不十分であること,そこには男女差があること,利用する施設によって補助犬共存意識が異なること,補助犬法と補助犬に関する知識の普及が補助犬受け入れに効果をもたらす可能性が示された。今後,このような現状を踏まえた上で,補助犬法の周知と受け入れ促進に向けての対応策を講じることにより,より効果的な社会教育ができるところに本研究の意義があると言える。また,受け入れは努力義務に留まっている住宅に関しては必ずしも受け入れ意識が低いとは言えないことが示されたことは,今後の義務化に向けて重要な知見と言える。
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今後の研究の推進方策 |
身体障害者補助犬の受け入れ促進に向けて,どのような問題点があり,どのような対応策が可能であるかを検討する為,受け入れ努力義務を負う住宅施設,他の受け入れ義務を負う施設・事業所,および一般施設利用者のそれぞれを対象とした調査結果を総合的に分析することを進める。
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