平成24年度おいては、25年1月にノーザンプトン大学クリス・ダーキン氏を招聘し、3月にはポーツマス大学名誉教授ノーマン・ジョンソン氏を招聘して、英国の社会福祉・貧困に取り組む社会的企業に関する講演会および研究会を開催した。また25年3月には英国でヒアリング調査を行った。調査では、ロンドン・ハックニー特別区、ランベス特別区、サザーク特別区、住民の健康促進をミッションとする社会的企業ターニング・ポイントや住民の絆を再構築しているピープルズ・スーパーマーケット、中間支援組織ソーシャル・エンタープライズUK、ランベス特別区のソーシャルケア部門から社会的企業として独立したトパーズなどを訪問した。また学術交流として、全学を挙げて社会的企業教育を行っているノーザンプトン大学のビル・トイヤー氏、レイ・アーウィン氏とロンドンにて意見交換を行った。 訪問先では、連立政権下での新たな貧困対策を調査した。ハックニー特別区は一定の成果をあげており、最近では市場主導型の地域再生に移行しつつあることを学んだ。ランベス特別区では、協同主義、住民自治型のコーポラティブ・カウンシルを標榜しており、その政策展開を把握することができた。 一方、日本の貧困については、兵庫県下で最も生活保護受給率が高い尼崎市を調査した。行革による公務員定数削減の影響を緩和するために、大福祉事務所制をとらざるを得ない実情を把握した。また貧困の連鎖を防ぐための「学習支援事業」の展開とその成果を調査した。 そのほか、研究代表者と分担者は英国における貧困や社会的企業について、学術雑誌での論文発表および学会での口頭発表を行った。これらは、最終報告書での柱となる重要な成果であった
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