精神病者監護法、癩予防ニ関スル法律及び結核予防法の成立過程に関する比較研究のうち、精神病者監護法に関しては2012年10月日本社会福祉学会において発表する(宇都宮みのり)とともに、「精神病者監護法案審議過程における『民法の不備』論の検証」(『精神医学史研究』16(2)で発表した(宇都宮みのり)。癩予防法の成立要因に関しては、「『癩予防ニ関スル法律』の制定要因に関する考察」(関西福祉大学社会福祉学部紀要16(2)に発表した(村上貴美子)。結核予防法の成立要因に関しては「結核予防法の成立要因に関する考察」として関西福祉大学社会福祉学紀要17(1)に発表予定である(村上貴美子)。 以上から、三法の制定要因・政策意図は、精神病者監護法は従来の通説―条約改正論―に対して、明治民法の不備論―財産の保障に重点が置かれ「人権」認識が薄弱―が主要因であることを明らかにした。これに対し、癩予防ニ関スル法律は近代国家に仲間入りを果たした「一等国日本」としての国家の体面を意図したのものであり、結核予防法は、富国強兵策を推進する上での人力政策(労働力および兵力の確保)を背景に制定されたことを明らかにした。時代は明治から大正へと移りゆく過程で制定された慢性疾患対策の代表的な三疾病対策は、近代国家形成という大きな時代の渦の中で、それぞれの政策意図を担って制定された。 なお、継続研究として実施過程の比較研究を行う予定であるので、後半は中宮病院(現大阪府立精神医療センター)および定礼(福岡県旧宗像郡)の実地調査を行った。今後は具体的・積極的に実地調査を進める予定である。
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