本研究は、緩和ケアにおいてソーシャルワーク本来の独自性である「生活者」としての患者・家族に焦点を置いた実践を阻む要因について1)ソーシャルワーカー自身、2)チーム、3)組織の側面から明らかにし、その実践のあり方を検討することを目的としている。 本年度は、「ソーシャルワーカー自身」の要因に焦点をあて、緩和ケア病棟を担当するソーシャルワーカーのインタビュー結果を質的に分析した。具体的には、ソーシャルワーカーが緩和ケア病棟での自分の役割や患者・家族ニーズをどのようにとらえているかを整理しながら、緩和ケアソーシャルワークの実際を把握した。その結果、患者・家族の生活を意識した実践がソーシャルワーク固有の視点であることは共通して認識されている一方で、緩和ケアにおいてソーシャルワーカーが患者・家族の生活に関して積極的に介入することがはばかられている実態が明らかとなった。これらの解釈は実態の記述にとどまっているため、今後、チーム・組織内でのソーシャルワーカーの役割や自律性との関連を踏まえて更に検討を重ねていく予定である。 また、本年度の取り組みとして、文献研究を行い医療ソーシャルワーク実践に影響する要因を検討した。その結果、医療ソーシャルワーカーの業務内容は、業務上の制約や裁量度などの影響を受けているとの知見が確認された。看護領域の先行研究からは、チーム内での役割認識の違いや専門職としての自律性とチームケアの推進との関連についての知見を得た。次年度では、これらの知見を基に、ソーシャルワーカーが「生活者」としての患者・家族に焦点を置いた実践を阻む要因を明らかにするための調査を計画中である。
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