本研究は、ソーシャルワークの独自性である「生活者」としての患者・家族に焦点を置いた実践に着目し、緩和ケアでの実践における独自性の発揮と1)ソーシャルワーカー自身、2)チーム、3)組織の要因との関係を探索することを目的としている。平成23年度は、ソーシャルワーカーの視点から緩和ケア病棟での実践内容や役割認識を記述することを通して、ソーシャルワークの専門性に関連する現象への理解を深めることを目的とし、緩和ケア病棟で実践するソーシャルワーカーへのインタビューデータについて質的記述的研究手法を用いて分析した。 その結果、ソーシャルワーカーは、緩和ケア病棟の【窓口】としての役割認識を強く持ち、入院までの支援に重点を置いていることが確認された。また、在宅緩和ケア推進の流れは、地域生活と施設ケアをつなぐ支援としてソーシャルワークの専門性を発揮しやすくしている可能性が示唆された。さらに、患者の入院後の支援において、ソーシャルワークが患者・家族への直接的支援(ミクロレベルの実践)に固執せず、多職種・関係機関との連携といつたメゾレベルの実践の中に専門性を模索することで、医療チームの関係性を維持・強化する機能を担おうとしている現象が確認された。本研究は、ソーシャルワーカーの視点からのみの記述に基づく分析であったため、今後はチームアプローチの観点に立ち他の専門職からの視点も交えつつ、医療チームにおけるソーシャルワークの専門性について詳細に検討していく必要がある。さらには、在宅緩和ケアでの実践構造についても探求を重ねていきたい。
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