本研究は、ソーシャルワークの独自性を「生活者」としての患者・家族に焦点を置いて実践することにあると捉え、緩和ケアでの実践においてソーシャルワーカーがその独自性を発揮することに関連する要因を明らかにすることを目的としている。 緩和ケア病棟のソーシャルワーカーを対象とした質的研究では、(1)緩和ケア病棟でのソーシャルワークが緩和ケアへの移行に伴う心理社会的ニーズに焦点を置いた実践であること、(2)入院後の患者・家族への直接的介入へのソーシャルワーカーの消極性は、実践環境の影響だけではなく、病棟看護師との役割接近による葛藤を回避・解消する方策の可能性があること、そして(3)緩和ケア病棟でのソーシャルワークの専門性は、院内外での連携機能(メゾレベルの実践)の中で見出されていることが確認された。これらの知見は、研究を進める上で緩和ケアソーシャルワークを直接的介入(ミクロレベルの実践)の側面ではなく、組織や職種間の調整的介入(メゾレベルの実践)の側面に焦点を置いたものとして捉えなおす必要性を示唆した。 平成24年度は、チーム医療におけるソーシャルワークの連携機能に着目しつつ、文献研究および質問紙調査の設計を行った。文献研究では、緩和ケアを含む医療領域でのソーシャルワーク実践の動向と関連づけながら、医療チームにおける多職種連携をテーマとした先行研究からチーム機能を促進・阻害する要因に関する知見を整理した。その上で、前年度までの質的研究で得られた知見に照らして論理的考察を試みた。また、本年度当初に予定をしていた質問紙調査の項目では、解析に必要なデータを得ることが困難な可能性が出てきたため、文献研究の結果を踏まえながら質問紙調査の再設計を行った。
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