研究概要 |
23年度は、提出した研究実施計画書にしたがって、宮城、長野での施設で調査を行う予定であった。9月の宮城の調査では、震災の影響で、日中活動場所が閉鎖統合されていた場所があり、その影響で、20名の調査協力者のうち、2名は実施することが出来ず、18名の実施となった。2月の長野は豪雪の影響で調査を実施できなかったため,その分の予算を繰り越しを申請した。 24年度は、広島、長野での調査を実施予定であった。広島の調査は実施したが、長野での調査が再び豪雪が予想されたため、神奈川県の施設での調査を実施した。 さらに22年度に実施したA施設、B施設の調査協力者のデータの分析を基に、2本の論文としてまとめた。一つ目の論文では、知的障害のある6名の女性の語りより、学齢期のいじめや本人の意思の無視、就労期の辛い仕事や失職といった社会の否定的な態度や対応が否定的な自己評価の積み重ねを招き、閉じこもりに至るが、福祉サービス選択時に自己選択・決定できる機会の提供という社会の肯定的な態度や対応がなされると肯定的な自己評価に一転し、ひとり暮らし支援やアドボカシー役の提供でいっそう自己評価を高めるパターンを見出せたことを論じた。これは、社会福祉実践面では、教育や福祉サービスの場の選択時、事前体験やていねいな聞き取りによる本人の意思の関与が最重要であることを示唆している点について指摘した。2つ目の論文では、40代になるまで自分の知的障害を認識していなかった2名の語りと自分の知的障害を認識していた1名の語りに焦点をあて,障害の可視性・不可視性と本人と親の障害認識、さらには社会からの抑圧へ対処する戦略の選択との間の緊密な関係性を示していることを指摘した。
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