歩行中に認知症高齢者が、環境のどのようなポイントに注意を向けたりあるいは注意を払わない傾向があるのかについて、視覚的注意に注目して定量的に測定することにより、認知症高齢者の歩行の特徴と転倒の潜在的要素を明らかにすることを目的とした。 22年度は、認知症高齢者の歩行時注意変動を測定するため、歩行路上に、その色、彩度などを変えた障害物の設置を行い高齢者の動作を解析するためのプレテストを行った。 まず若者や、認知症のない高齢者における非認知症者を、比較対象としの床面に置いた障害物に対しての動作と障害物へ注視状況を分析した。結果、障害物に対しての注視を早くから行い歩行の際には、直接障害物への間合いを測り歩行に障害とならないよう跨いだり、回避を行ったりといった動作がみられた。これに対し認知症高齢者は歩行路上の障害物をついては、じっと見つめる、あるいは障害物に気づかずに踏んでしまうという健常者とは違った動作がみられた。 このことから認知症高齢者においては、歩行時注意水準が落ちていることの可能性が高いことが推測される。今後更にデータを積み重ね、認知症の注意水準が低下していることを明確にしていく予定である。
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