認知症高齢者が歩行中に、環境のどのようなポイントに目を向けたり、あるいは注意を払わない傾向があるのかについて、視覚的注意を定量的に計測することにより、認知症高齢者の歩行の特徴と、転倒の潜在的要素を明らかにすることを目的とした。 認知症高齢者へグレーの3段階の輝度を変えた障害物を用いて、環境変化による認知症者の行動との関連を明らかにし、その結果の転倒事故予防への応用を目指すことを目的とした。結果、高齢者と認知症高齢者間では、歩行時間は障害物があった場合、認知症高齢者が多くの時間を必要とし、接触回数が圧倒的に多かった。接触回数は、薄グレー、濃グレー、黒の順に増加しており、輝度が低いほど接触回数が増加し輝度コントラストが大きい薄グレーが認識されやすかった。また、認知症高齢者は、障害物への注視点が高齢者よりも近く、回避行動は見られるが目測よりも動作が短縮してしまうため、目標物や障害物の指標には、実際の指標より周辺を大きく表示するなどの工夫が有効である。
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