研究概要 |
本研究は,公式リーダー1名が存在する集団において,特定のリーダーシップ構造が成立する過程を解明すると共に,リーダーシップ構造が,公式リーダー,集団メンバー個々人,及び集団全体の成果に及ぼす効果を明らかにしようとするものである。平成22年度は,(1)リーダーシップ共有過程における公式リーダーの役割の解明,(2)分散型リーダーシップ構造の実態の解明,(3)共有型リーダーシップ構造の有効性を調整する要因の探索,の3点を主に検討した。 特に(2)(3)については,インターネット調査によって得られた様々な企業の従業員587名の回答から,次の点が示された。(1)公式リーダーを回答者の所属部署の管理職とした場合,サブリーダーのいない公式リーダー中心型の集団は38.7%に留まり,公式のサブリーダーや非公式リーダーが存在する分散型リーダーシップ構造を有する集団の方が一般的である。また,サイズが大きい集団ほど分散型リーダーシップ構造の占める割合が増大する傾向がある。(2)分散型リーダーシップ構造を有する集団の方がリーダー中心型の集団よりメンバーの集団への満足度が高い。(3)(2)の効果は,集団の課題の性質(ルーティンワークの程度)や競争意識の強さによって調整され,ルーティンワークの程度が低いほど,また競争意識の程度が低いほど,リーダー中心型と比較して分散型の有効性が顕著である。 分散型リーダーシップ構造の一般性と有効性が示されたことは,リーダー中心型構造を前提としてきた従来のリーダーシップ研究に前提の見直しを迫る大きな成果である。なお,(1)については対人的交流記憶に関する文献レビューを行うと共に,集団観察を実施中である。
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