本年度は、職場での動機づけを高めた体験について、汎用性のある結果を得るため、若年層だけでなく、離職の危機を乗り越えてきた年長者も含め、さまざまな業種・職種の正社員や派遣・契約社員、アルバイト・パート社員を対象に深層面接による調査を実施した。環境要因の違いから就労意欲の程度に違いが生じている可能性があるため、首都圏およびいくつかの地域ブロックの主要都市において、社会人への面接調査を実施した。面接を行うにあたって、感動の効果について検討した戸梶(2004)および先の挑戦的萌芽研究での結果を参考に5つのカテゴリーに含まれる動機づけ向上体験を想起させ、その内容について以下の点を詳細に確認した。(1)体験の具体的内容、(2)体験前から体験に至るまでの経緯、(3)動機づけが向上した/しなかった理由、(4)感動体験と感じられた/感じられなかった理由、(5)仕事に対して起きた変化とその理由、(6)体験の個人的な意味や意義、および個人属性であった。調査方法は、予め調査主旨を記した依頼状とともに、上述の項目について印刷した用紙を配布し、協力への承諾の得られた者に自由記述で回答を行うよう依頼し、後日、インタビューもしくは電子メールにて内容の詳細について面接を行うようにした。また、説得研究やマインド・コントロール研究に関しても、何らかの示唆を得られる可能性があると考え、文献のレビューを行った。後者の結果から、楽しくてためになると思えるような雰囲気作り、日頃からの若年者への手厚い対応、モデルとされそうな魅力的な人物による研修会の開催など周辺ルートからのアプローチが有効となると考えられた。一方、前者の結果からは、仕事での目標を持つことの重要性が見出され、その先行要因として、社会人としての自覚、自己成長動機、仕事へのコミットメント、組織へのコミットメントが重要であることが示唆された。
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