本研究は,友人関係・仲間集団の排他性がもつ様々な影響について,様々な側面から検討を行った。特に,排他性は,個人のもつ排他性欲求と,所属する仲間集団の行動規範である排他性規範に分けられることを指摘した。前者は,自分の所属している仲間集団およびそのメンバーに対する概念であり,仲間集団やそのメンバーとの親密さを確認するために,第三者を排除して仲間集団内だけの活動および,特定のメンバーと一緒にいることを求める傾向と定義し,一方で後者は,自分が所属している仲間集団のメンバーがとるべき同一行動についての暗黙の規範のことであり,同一行動とは,同調行動や第三者を排除する行動から構成されるものと定義した。 本年度の研究では,排他性欲求,排他性規範が学校生活時間内の感情頻度に影響を及ぼし,そのことが自ら学ぶ意欲の高さに影響していることを仮定し検討を行った。自ら学ぶ意欲のプロセスモデルを援用し,そのモデルに位置づけられている安心して学ぶ環境を構成する要因の一つとして,排他性欲求と排他性規範を考えた。 その結果,高校生女子を除いて,排他性欲求が強くなることで,学校生活時間内のポジティブ感情を高め,そのことが自ら学ぶ意欲の欲求・動機面を高めることが示された。全体的に十分な適合度が得られ,モデルとしては適切であったと言えよう。一方で,排他性規範については,自ら学ぶ意欲への影響が見られず,その原因としては,尺度の床効果の問題や,学校生活時間内の感情の測定方法の問題が指摘された。本来ならば,仲間集団の排他的な行動規範が強いと考えることで,学校生活において,不安や落ち込みといった感情が支配し,学習意欲にマイナスの影響を与えることが予想されたが,本研究ではその影響について十分に明らかにすることができなかった。
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