本研究の目的は、有権者の中核的な信念体系(価値観)と、争点態度・政治意識との関連を検討することである。本研究の特色は、価値観(家族観、権威主義、愛国心、寛容性など)と、政治的争点態度との関連をさぐることに加え、近年の政治的価値観調査で研究対象となりつつある性格特性の影響も検討していることである。 2011年度は、2010年度に実施を予定していたものの震災の影響で延期せざるを得なかったインターネット調査を、2012年度分のものも含め、2回に分けて実施した。 調査票に含めた項目は、(1)政治意識(「大きな政府・小さな政府」をはじめとする、主要な政治意識項目。イデオロギー関連項目や政党支持などを含む)、(2)政治知識(時事問題、政治システムに関する知識など広範囲に測定)、(3)メディア接触、(4)自尊心、有効性感覚、孤独感、Big Fiveなどのパーソナリティ尺度、(5)権威主義、愛国心、悲観性などの価値観、などである。 データは現在分析中であるが、単純集計からも非常に興味深い結果が得られている。たとえば近年、公務員数の削減が争点の一つとなり、マスメディアでもよく取り上げられているが、そのためか「日本の公務員数はOECD諸国平均より多い」「日本の公務員数は多すぎる」「日本は『大きな政府』である」といった、誤った認識を持っている回答者が多い。 今後は、こうしたバイアスの規定要因をはじめ、さまざまな争点態度と価値観・性格特性との関連を後半に検討していく。また、価値観と争点態度の安定性との関連を探るため、第1回の調査対象者に、第2回目のネット調査(パネル調査)を実施する。
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