本研究の目的は、有権者の中核的な信念体系(価値観)と、争点態度・政治意識との関連を検討することである。本研究の特色は、価値観(家族観、権威主義、愛国心、寛容性など)と、政治的争点態度との関連をさぐることに加え、近年の政治的価値観調査で研究対象となりつつある性格特性の影響も検討していることである。 2012年度には、2011年度に実施したウェブ調査の第2回パネル調査を実施し、これまで得られたデータの分析ならびに公開されている社会調査データの二次分析を行った。現在も引き続き分析中であるが、現在のところ以下のような知見が得られている。(1)愛国心(日本へのアタッチメント)は自尊心や孤独感、効力感などの性格特性(自尊心や効力感は正の相関、孤独感は負の相関)および一部のソーシャルメディア利用と関連(2ちゃんねる利用は正の相関、Facebook利用は負の相関)している。(2)政治的有効性感覚は、集団参加や人脈の中で培われるだけでなく、自尊心などの性格特性とも関連している。(3)一般的信頼感などの中核的価値観は、家庭教育や社会参加など社会化の過程で獲得される。その他、中核的価値観および性格特性(Big Five)、メディア接触と、政治知識および政治的争点への態度との関連も検討した。 それぞれ興味深い結果が得られたが、中でも孤独感が(集団参加等の効果を統制しても)さまざまな社会的・政治的態度と関連していることは、近年重要なトピックとなっている社会的疎外や社会的排除の影響を考える上で非常に重要だと考えられる。 研究成果の一部は国際ワークショップで報告したが、今後、国内外の学会発表ならびに研究論文としてまとめる予定である。
|