研究概要 |
本研究の目的は、説得における相互作用性に焦点を当て、また、受け手の意識的な反応だけでなく、自動的な反応による説得効果を明らかにすることである。本年度は、2つの実験室実験を行った。第1実験では、実験参加者(大学生)にとって自我関与度の高い卒業試験の導入を説得テーマとし、独立変数として卒業試験導入の長所.短所情報の提示順序(長→短、短→長)、説得の送り手(実験協力者)による受け手の動作のミラーリング(前半で実施、後半)を設定した。実験場面では、送り手が受け手(実験参加者)に対して一方的に卒業試験の情報を与えるのではなく、試験の長所と短所を決められた順番でお互いに出し合うことを約15分間行うようにし、その後、試験導入に関する質問紙に回答させた。その結果、ミラーリングと対提示された情報の影響を受けやすいという、当初、予測した交互作用効果は認められず、試験導入賛成度についてミラーリング要因の主効果が認められた(ミラーリング回数5回以上の場合。F(1,50)=4.71,p<.05)。これは、ミラーリングを後半に行った方が前半に行った場合よりも試験賛成度の高いことを示しており、予測を支持する傾向が認められた。 第2実験では、説得テーマをサマータイム制導入に変え、独立変数として、説得情報の提示順序(長→短、短→長)、ミラーリング(有、無)を設定した。ミラーリング有り条件においては、それを15回以上行うことにした。しかしながら、いずれの主効果、交互作用効果も認められなかった。第1実験よりもミラーリングの効果が出るように操作したが、ミラーリングによる効果を生起させるには、第1実験のように長所情報と同期させることが必要なようである。次年度以降は、情報の提示順序とミラーリング、顔面表情など、受け手の自動的反応を引き出しやすい刺激を与え、さらに検討を加えていく計画である。
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