研究概要 |
平成24年度に行った実験室実験の目的は、説得場面のポジティブな雰囲気と説得テーマを支持する論拠数が受け手の被説得度に及ぼす加算的な影響を明らかにすることであった。 実験デザインは、説得場面の雰囲気(ポジティブ、普通)×説得テーマを支持する論拠数(2個、6個)という要因実験であり、いずれも参加者間要因であった。説得テーマとして「秋学期入学の導入」を設定した。実験協力者と実験参加者は、机の角にほぼ45度の角度で座り、秋学期の長所と短所を相互に挙げていくことを5~10分間行い、その間、実験協力者は上記2要因の操作を行った。実験協力者は、両者の議論の最後に、「いくつかの短所はあるけれども、秋学期を導入した方が良い」という趣旨の意見を述べた。 説得場面の雰囲気要因の操作について、ポジティブ条件では、実験協力者が4回以上実験参加者の動作(笑う、手を組むなど)をミラーリングし、さらに、相手の出した論拠を誉めること(例えば、「それは、面白い視点ですね」)を2回以上行った。普通条件では、そうしたことを行わなかった。長所の論拠数要因については、2人の議論中に実験協力者が提示する、秋学期に関する長所の個数を操作し、2個条件、6個条件を設定した。 秋学期入学導入賛成度、賛成度変化(議論後の賛成度-議論前の賛成度)に関して分散分析を行ったところ、主効果、交互作用効果は認められなかった。しかし、賛成度変化について、両要因に加え、自我関与度、認知欲求、説得能力認知も加えた重回帰分析(ステップワイズ法)を行ったところ、説得能力認知の有意な標準化重回帰係数が認められた(β=-.461, p<.05, R自乗=.212)。これは、自分に説得能力があると認知している実験参加者ほど、秋学期入学に対する賛成度変化が小さいということであり、説得能力認知が被説得度に影響を与えていたことが見出されたと言える。
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