本研究は、交渉相手の感情と解読者の反応を実験的に検討するもので、怒りが和解を阻害し、困惑が和解を促進することを実験的に明らかにした。第1に、情動知能が社会的違反の心理学的プロセスにおいて媒介要因となっているかどうかを調べた。実験の結果、社会的違反場面における困惑の感情表出は、両者の関係を修復すること、つまり宥和機能が見出された。さらに、情動知能の個人差がこうした感情の宥和機能を媒介するかを検討し、ある種の情動知能が感情の宥和機能を媒介することが示唆された。第2に、感情表出が交渉結果にどのように影響するかを実験的に検討し、それが情動知能によって媒介されるかどうかを調べた。実験の結果、感情解読の情動知能が高いものは、怒りを表出する交渉相手に対し、より強い譲歩を行うことが示された。さらに、感情解読の情動知能が高い交渉者は、幸福感情の相手に対し戦略的な目標を持つが、社会的違反場面では、怒り感情の相手に対し利己的な目標を持つ事が示された。
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