研究概要 |
自伝的記憶としての買い物行動に関する研究としては,若齢者および高齢者において記憶特性質問紙(MCQ)の質問項目を含む質問紙を用いて検討した。調査参加者はもっとも深く印象に残っている買い物の出来事を想起し,この出来事の記憶は調査参加者の年齢や保持期間の長さ、MCQの8因子によって特徴づけられた。結果として、もっとも深く印象に残る買い物の記憶は、若齢者では最近の数年以内に起きた出来事が主となるが、高齢者では10年以上前の出来事が多く想起された。さらに、高齢者は必ずしもレミニセンス・バンプ(10~30歳の頃に経験した出来事が想起されやすい現象)を示すわけではないことが示され,自伝的記憶としての買い物は壮年期の自伝的記憶を検討するのに有効であることが示唆された。 IGTによる報酬系機能に関する研究としては、ギャンブル課題を用いることから,修正日本語版South Oaks Gambling Screenを用いたギャンブル依存傾向の推測を試み,ギャンブル依存傾向の増悪に連動して実施するギャンブルに差異が見られることを示唆した。また,報酬系機能を検討するにおいて,報酬形態として,現金とポイントなどの擬似貨幣の比較を予定していることから,割引表示に現金を用いた場合とポイントやクーポンなどを用いた場合とでのうれしさなどの主観的評価を検討し,電子決済などへの親和性の高い人たちが,クーポンやポイントなどの利用条件の差異をより細かく弁別していることが示唆された。また,ポイント表示における価値割引推定において,現金と主観的に等価なポイント数の換算と,ポイント数と主観的に等価な現金の換算とでは,価値割引の推定に差異が見られることが示唆された。皮膚電器反応を用い,IGT遂行過程と報酬形態との関連の検討も着手しており,1,000円以上の大負け後のカード選択と皮膚電器反応との関連が示唆された。
|