研究課題
本研究の目的は、統合失調症患者と自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder; ASD)児・者の高次認知機能、特に情報の体制化に類似した障害がみられる可能性を検討することである。もし両臨床群に類似した情報体制化の低下が見られるならば、この障害は、両疾患の神経的・遺伝的基盤に由来する認知的中間表現型である可能性があり、統合失調症の発達障害仮説を裏付けるものと推察される。情報の体制化について具体的には、入力段階は「情報の即時的体制化」、保持段階は「保持情報(知識)の構造化」、出力段階は「体制化能力を反映する言語行動」に焦点を絞り、ASD児・者の情報の体制化能力が健常児・者と異なる可能性について検討を行っている。現在までに、体制化能力を反映する言語行動について、全称量化表現の理解に着目し、発達障害児の健常児の応答の相違について分析を行った。そして応答行動が健常児と異なる可能性を見出し、情報の体制化の障害がASDの認知表現型である可能性を見出した。2012年度以降は、保持情報の構造化段階について取り組んでいる。現在、知識構造の分析に必要な語流暢性データベース(コーパス)の作成を進めている。今後発話データを用いた知識構造の解析を行ない、統合失調症とASD児・者の知識構造の様相について、健常者の構造化を参照しつつ、比較分析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
関連機関から一定数の患者群のデータの供与が得られた。また統合失調症の語流暢性データ、及び申請者が収集したASD児・者及び健常者データについて整理し、ほぼ電子化を終えることが出来た。現在は、CHILDESなどデータベースシステムに沿った形式でコーディングを行っている。今後、解析に利用できるデータの選別や人口学的変数や症状による下位群分けなどの作業は必要だが、各臨床群・健常者群の知識構造の解析を進められると思われる。
今後、知識構造の解析、すなわち語流暢性データベースから、特定のカテゴリ(例:ドウブツ)についての発話を抽出し、その知識構造を推定する。具体的には、発話語順から非類似度行列を作成、各発話(ドウブツ)の心的布置表現を明らかにする。それとともに、通常健常者において見られる知識構造の次元(大きさといった知覚的次元や捕食性といった知識的次元)が抽出されるかについて調べる。これら解析により、統合失調症と自閉性スペクトラム障害児・者間、両臨床群と健常者との類似性・相違の比較が可能となる。また今後も、可能な限りデータ提供を募り、データを増やす予定である。
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