【研究の目的】 本研究の全体的目的は、情報体制化の特異性が、自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder; ASD)及び、統合失調症における認知表現型(cognitive phenotype)である可能性を追究することである。2012年度までは、主に発達障害児・者を対象として、①全称量化表現の理解といった体制化能力を反映する言語能力が健常児と異なること、また、②語流暢性課題の発話パタンから推察される知識構造が特異であることなどを明らかにし、情報の体制化の障害がASDの認知表現型である可能性を見出した。2013年度からは、ASD児・者と同様に、情報の体制化に特異的な障害を示す統合失調症患者も対象に含め、この障害が発達障害児・者及び精神疾患患者に共通する認知表現型である可能性を検討している。さらに2013年度から、情報の体制化機能と発達障害児・者や精神疾患患者の社会適応との関連についても検討を行っている。本年度は、2013年度に整備した機能的転帰評価のための検査バッテリや尺度日本語版を用いて、機能的転帰の階層性について検討を行った。
【成果】 機能的転帰の階層性を検討するために、認知機能、日常生活技能についてはMATRICS Consensus Cognitive Battery日本語版(MCCB-J)、日常生活技能の測定には、認知機能状態を最も良く反映するUCSD Performance-based Skills Assessment-Brief Japanese version日本語版(UPSA-B_J)を用いた。また社会機能・適応については、Social Functioning Scale(SFS)、及び就労(家事・学業を含む)の質と量(時間数)の評価には、Social Adaptation Scale(SAS)の就労領域を用いて評価した。これらにより統合失調症患者の機能的転帰の階層性を検討した結果、就労は、認知機能の社会的側面(情動管理)、および社会機能の自立的側面と強く関連していることが明らかになった。
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