研究概要 |
23年度では、12歳から15歳(平均14歳)の中学生243名(男子117名、女子126名)、16歳から18歳(平均16歳6ヶ月)の高校生408名(男子217名、女子191名)、合計651名を対象に、親子葛藤における自由裁量判断と道徳的自己との関連性を調査した。主な結果は以下のとおりである。 ・個人の自由(個人領域)と関連した項目では、理想と実際の決め方に対応した別の因子が見出された。一方、多面的と呼ばれるプライバシーの強い場面や慎重さが要求される場面と、親の同意が必要な場面(慣習領域)では、理想と実際の決め方の項目が同じ因子として抽出された。青年は自由を思い通りに発揮する場面と制限する場面を使い分けていることが示唆される。 ・中学生では、安全や思慮深さが求められる場面で個人の自由を発揮することが道徳的自己を低下させていた。高校生では、自由の発揮が一貫して中学生より高いと同時に、親の同意が必要な場面での自己決定が彼らの道徳的自己を低下させていた。これは、社会的規範に合致する親の意見にも反発する「統制不全型」(首藤,2009)や「奔放型」(首藤,2011)の現れ方が中学生と高校生とで異なっていることを示唆している。 次年度は、道徳的自律の発達的文脈としての親子葛藤の内容を調査し、青年と親の領域調整、および道徳的自己の相互影響性のプロセスを明らかにする必要がある。
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