平成24年度は研究の最終年度にあたり,2年間の研究成果に基づいて,児童を対象とした。平成24年度の研究は,(1)文章と非連続型テキストの関係のあり方による理解の影響について,(2)児童を対象とした,文書(文章と図表などの非連続型テキスト)の読解のパターンの分析,の2点であった。 (1)については,2つの要因を設定し,それぞれで関係のあり方を実験的に検討した。第一は,文章と非連続型テキストのレイアウトによる読解への影響,第二は,文章と非連続型テキストの説明内容の関係性による影響である。第一について,文章と図表を分離したレイアウトと交互に配置したレイアウトでは,作業記憶容量の影響を受け,容量小の者は分離レイアウトの理解に困難さを示した。第二について,文章と図表が同じ内容を説明する文書(重複型)と異なる内容を説明する文書(補完型)とを設定した。重複型は,文章と図表の双方から同一の説明内容を把握できるため,より理解が高まる可能性を,一方,補完型は文章と図表とを相互に補完品しながら読むため,理解が難しいと想定した。しかしながら,作業記憶容量小の者は,重複型では情報量過多となり,かえって理解が低下するという重要な知見が得られた。 (2)については,これまでの知見を児童の眼球運動を測定することによって確認した。対象は小学校4年児童で,小学校での社会科と理科教科書を対象に,読解時の眼球運動測定と理解度測定を行った。結果は,大学生でみられた特徴的な読解は全く見られず,イラストを最優先する,図表の大きさと凝視時間とは比例する,文章部分と非連続型テキスト部分凝視の個人差は見られない,などが明らかになった。この成果は先行報告がない知見であり,25年度の学会で報告する予定である。
|