割合概念に関して、子どもの思考を基にした新しいカリキュラム構成による教授介入の実験を行った。そこでは、(1)子どものもつインフォーマルな知識をカリキュラムに組み込む、(2)新しい概念を学習する際の認知的障害を考慮する、という視点を取り入れたカリキュラム構成を構成し、それを基にした教授介入をおこなった。新しいカリキュラムの内容としては、教科書にあるような小数倍や公式を中心に指導するのではなく、割合の大きさを視覚的にとらえるための教材の導入、量的な側面を理解させる指導を行った。また、学習者の認知的障害を最小にするために基にする量や比べる量の用語ではなく、部分と全体の点から理解させる指導を行った。これらのカリキュラムについて、現場の教師と討論し、具体的な指導内容を決めた。割合単元の学習後に、教科書で指導された統制群と新しいカリキュラムによる実験群との比較をおこなった。実験群は、統制群より、割合の3用法の問題において高い正答率を示した。さらに、応用問題としての質的な解決が要求される関係問題においても、実験群が統制群より高い正答率を示した。また、子どもが使用した方略の分析では、統制群は公式を用いた解決がほとんどであった。しかし、実験群は、見積もり方略や図や倍数を用いる方略など多様な方略が見られた。こうしたことより、子どもがもつインフォーマルな知識を利用したカリキュラムによる指導は、割合概念の理解を促進させることが示された。
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